お願い、好きって言わないで。







その後の劇は大成功。


生徒はすっごく笑っていたし、一つ一つの演技に反応を示してくれてこっちまで楽しかった。

以前は見る側だったけれど、する側も楽しいんだなって思った。



そしてその日の帰り道。
私は智也の家に行くか否かで悩んでいた。

制服の入った紙袋を片手に、自分と智也、二人の家の前をウロウロする。


一度、家に帰るべきだろうか。
けれど、家に帰ってから外に出たら絶対親にバレてしまう。

かと言って、素直に智也の家に行くのもなんだか嫌だ。


「綾ちゃん」

一人、今度は立ち止まって悩んでいると、近くで私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「智也」

顔を上げればそこに智也がいて、手にはコンビニの袋があった。


「……お使い?」

「親が仕事帰りに、二人でご飯行くんだってさ。
だから夜は適当に済ませようと思って」

「あ、コンビニで済ませるなんて体に悪いでしょ?
仕方ないから作ってあげる」


これはいい口実ができたと、自分でも思った。
何も智也の思い通りになったわけではないと言い聞かせる。