お願い、好きって言わないで。



今は人が通っていない、学校の廊下で。

側から見れば、高校生カップルが堂々とキスしているように見えているのだろう。


「……綾ちゃんが余裕そうにしてるの、ムカつく」

キスを終えると、智也は私の制服のリボンに触れてきた。
嫌な予感がする。


「待って、もうすぐ劇だから行かないと」
「学校で少し危ないことするのは嫌?」

「危ないって…」
「劇中も俺のことを忘れないようにする呪まじない」


意地悪そうな笑み。
どうやらさっきの仕返しの仕返しをされるようだ。

簡単にリボンが外されてしまう。


「智也、ここ廊下…」
「場所、移動する時間あんの?」
「な、いけど」

その言葉で私を大人しくさせるだなんてずるい。
それ以上に本気で抵抗しない私が一番、ずるいのかもしれない。