ほんの数秒がとても長く感じていたその時、ようやく智也が唇を離した。
そして至近距離には、整った智也の顔が。
「いい加減、俺を男って意識しろよ」
そう言って、智也は私から目をそらさない。
智也を男として意識しろ?
それで智也は私にキスをしたの?
どうして急に?
「なんでこんなことするの?」
わからない。
智也の本心が。
思春期でふざけているのだろうか。
「俺はずっと、綾ちゃんのことだけ見てた」
「……からかわないで。
もうあなたと私は先生と生徒の関係なんだから」
いきなりの告白紛いな言葉が逆に、私を冷静にさせた。
「その前に俺と幼なじみだろ」
そんなこと言われたって、受け入れられるはずがない。



