お願い、好きって言わないで。




職員室に着き、制服の管理をしていた先生の席へと向かう。


「あった…」


先生の言う通り職員室にあり、私専用の紙袋に入っていたようだ。

中には演出で使う眼鏡も入っている。


設定は、漫画や小説でありきたりな実は美人の地味な女と、イケメン男の恋愛もの、らしい。

実は美人っていうのは少し無理があるが、地味な女はいける気がする。


なんて思いながら、職員室の近くにある教室で着替える。


せっかくの劇だ。
生徒には何をするか秘密にしてある。

生徒の反応を楽しみにしてるい先生たちがほとんどだから、ここでバレてはならないと思い、眼鏡もかけた。


着替え終わり、外へと出る。

最初こそ恐る恐る廊下を通るけれど、すれ違う生徒は私に一切気づかない。


そこまで馴染んでるのかと、逆に少し自信につながった。


それでもなるべく人が通らない校舎を通り、大丈夫だとは思うけれど少し俯き加減で少し急いでいると───


「……きゃ…!」


誰かと思いっきりぶつかって、こけてしまう私。
恥ずかしい上にダサすぎる。


とりあえず立ち上がろうとしたその時。


「悪い。あんた大丈夫か?」


あの、低くて聞きなれた声が耳に届いた。