「知らない、離せ。
帰る、遊び人に興味はない」
「遊び人じゃねぇから離さない」
「遊び人でしょ!」
「昔の話。今はまとも」
「どの口が言うんだか。この変態野郎」
自分でも驚きだ。
ここまで嫉妬するだなんて。
ただ、湧いてきた感情はもう止められない。
「綾ちゃん」
また、智也が耳元で囁いてきた。
今度は甘さを含んで、私の名前を───
「悪かったから、もう怒らなよ」
「……っ、知らない」
どこか余裕のある声。
私ばかりかき乱されている気分だ。
「綾ちゃんは今、俺に何してほしい?」
「消えてほしい」
「綾」
「……っ」
ずるい、ずるい。
ここにきて呼び捨てするだなんて。
「拗ねるのも可愛いけど、たまには素直にならねぇとな?」
智也の手が、私の頭の上から頬へと移動する。
撫でるようなその手つき。
やっぱり彼は、手慣れている。
「じゃあ、もう一度聞く。
綾ちゃん、俺に何されたい?」
彼の手が私の首筋をなぞった。
ゾクゾクして、もう敵わないと判断した私。



