ただ、今この瞬間だけは。
自分の立場も状況も、雅さんのこともあいつのことも全部───
忘れていたいと思った。
忘れさせてほしいとさえ思った。
目の前の、たった一人の男のことだけを考えていたい、と。
「私って、すごい嫌な女だよ?」
自分自身、わかっているからあえて聞く。
こんな私でもいいのかと。
「まあそうだな。すぐ逃げるし、勝手に避けるって思ったら、今みたいに近づいてきて狂わせる。
でも、こんな自由気ままな幼なじみを俺は好きになったからな」
智也が近づいてくる。
もう抵抗はしない…というか、頭になかった。
もしかしたら初めてかもしれない。
目を閉じて、智也のキスを受け入れたのは───



