俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」

クリスタルの手を強く握る。戻ってきてくれと叫ぶ。クリスタルの心臓が鼓動しているのか、息をしているのか、俺はクリスタルを涙を流しながら見つめた。

「おい、俺を忘れるな!お前はまだ俺と勝負している途中だろ!!」

後ろから苛立った声が聞こえてくる。俺は無視してクリスタルを見つめ続けた。ジャックの声なんてもう届かない。

「テメェ、ふざけてんのか!?」

ジャックは俺を汚い言葉で罵り始める。言葉は俺の耳に入らず、心に少しの傷もつけない。クリスタルの温もりに、リーの処置に、全ての神経を集中させているのだ。

「この腰抜け!!マヌケ!!」

「女に現を抜かすからこうなっちまったんだ!つまんねぇ奴!!」

「さっさと俺に刺されて死ねや!!」

何十分ジャックは叫び続けたのだろう。パンッ、という音が日の沈んだこの場所に響く。

それは、クリスタルの命を今奪おうとしている銃の声だった。そして、後ろでもがき苦しむ声……。俺はゆっくりと振り返って驚いた。