そこはあたしたちの始まりの場所。



あたしの告白はなかったことにされ、彼に想いを伝えられた場所。



なんでこんなタイミングでここに…



「お前が何に怒ってんのかわかんねぇ。今日のディナー行けなかったのは悪かったよ。でも違うんだろ?」

「……」

「こっちみろ」



見れない。



今見たら、言いたいこととは別の、もっとひどい言葉が出てしまいそう。



「こっちみろって」



無理やり彼の方に向けられたあたしは、もう耐えきれなくて。



溢れる涙もそのままに、彼を問い詰めた。



「あの女の人だれ?なんで手なんて繋いでるの?あたしとだってほとんど繋いだことないし‼︎あんな優しい顔で微笑みかけてるのなんて見たくなかった‼︎結局あたしだけが好きが大きくて、苦しいよ‼︎」

「は?女?」

「とぼけないで‼︎見たもん‼︎あたしが記念日楽しみにしてたの知ってたくせに‼︎そりゃ仕事だもん、ディナー行けなかったのはしょうがないけど‼︎あんなお似合いな光景、嫌に決まってる‼︎」

「おい、なんの…」

「せっかくのワンピースタバコ臭いし‼︎写真ぜんぜん集まんないからあたしの想いばっかりのアルバムになっちゃうし‼︎あたしの方が怒ってるのに、いきなり居酒屋きたと思ったら不機嫌だし‼︎」

「おい、聞けって」



一度話し出したら止まらない。



言わなくていいことまで口から出てしまう。



「やだ‼︎あたしわかんないよ‼︎こんなに好きなのに‼︎好きだから苦しいもん‼︎あたし以外好きになっちゃうの耐えらんない‼︎」

「あー、もう。俺の話を聞けって」



わんわん泣き叫ぶあたしに彼が叫ぶ。



「5秒でいいから。一旦黙って俺の声を聞けよ」



懐かしい。



1秒から3秒になって、今度は5秒。



あたしばっかり時間制限があったけど、今日は彼の番。