屋上の扉が開き、一人の女生徒がやってきた。

涼の腕時計はまだ授業開始より十五分も早い時間を示していたので、二人はそのまま話し続けた。

「平和っていうかー、生温いっていうか。刺激がないじゃない。平和に越したことはないって、もちろん判ってるよ、俺も。でも、俺って刺激を求める性格っていうかさ……流れる白い雲を目で追いかけちゃったりしてると」
 
一樹の言葉を、涼は途中までしか聞いていなかった。

二人の目の前に、先ほど屋上にやってきた女が立ちはだかったからだ。

涼より後に女に気づいた一樹も、彼女の接近によって言葉を切った。
 
女は座り込む二人の前に仁王立ちし、腕組みをし、見下すような視線を彼らに投げかけた。

額に縦の皺が入っている。

眉をしかめていることに気付く。