呪いたい奴がいた。

 殺したい奴がいる。

 だけど、呪う覚悟が、殺す覚悟が、俺にはない。

 だけど、それでも許せなかった。

 あいつが憎かった。

 だから、頼んだんだ。

そう、代行人に。

 お願いだから、あいつを呪ってくれ。


「誠に残念ですが、二年B組の斎藤元君が昨夜自殺しました」
 
 禿げ校長が辛気臭い顔でそんなことを言った。斎藤元はあまり良い評判の聞かない奴だ。そして、誰もが思っていた。あいつは殺される事はあっても、自殺なんかするはずはないと。

「やっぱり代行人に殺されたんだって。間違いないよ。だってあいつめっちゃ恨まれてたもん」

 誰かがそんなことを言った。

 代行人。自分の代わりに他者に呪いをかけてくれる魔人らしい。その魔人がどんな姿をしているのか誰も知らない。ただ代行人に呪いをかけられた者は苦しみながら死ぬらしい。

 まぁ、ただの都市伝説の類だろう。ストレスが蓄まりやすい現代の歪みみたいなものだろう。

 誰だっているだろう? 呪いたい奴の一人や二人ぐらい。

 だから代行人なんていう存在が創られたんだと俺は思っていた。