結局、家に帰るまでに売れた金魚が5匹、めだかが12匹。
夏の初めなのでまずまずといった塩梅だ。

軽く手ぬぐいで汗を拭うと、まさおは肩からタライをおろして大きな金魚溜めに残った魚たちを放してやる。
魚は嬉しそうに水草の下に帰っていった。
まさおは体を反らして腰を伸ばすと、小さな木造平屋の自宅へ。
勝手口をくぐる際に懐に手を伸ばすと、カステラが二切れ現れた。

お得意様にご苦労さまと頂いたのだ。
一切れは今から麦茶とともに頂こう。喉はもうカラカラだ。
残りの一切れはまた明日に食べようと、蝿帳をかぶせて台所に置いた。