「…会うのを避けてるだけで逃げてないもん」
「お前たちの問題に口出すつもりはないが、電話ぐらいしてやれよ」
「電話番号しらない」
はぁっ⁈と間の抜けた顔をしているコウ兄の手から、オムライスとスプーンを奪い、オムライスを頬張る。
「いや、ちょっと待て待て…あいつから連絡先聞いてないのか？」
「聞いてないし、聞かれてない」
「はぁー、よくそれで会ってたな」
「だよね…」
他人事のように返事をする私に、コウ兄は何かを書き私に渡してきた。
「なに？」
「あいつの電話番号」
「いらない」
「ちゃんと話した方がいいぞ」
「体の関係を清算しましょうって言えばいいの？そうね…こんなに胸が苦しい思いをするなら清算したほうがいいんだわ」
ムキになってるとわかってるけど、自分で口に出してしまうと、心に突き刺さるものだ。
「来なきゃよかった」
「ハァっ？」
完全な八つ当たりだ。
「だから、ここに来なきゃ、高橋さんに会うこともなかったし、好きだとも言ってくれない彼を待つだけの生活にモヤモヤして、電話番号も知らない体だけの関係を続けることもなかったって言ってるの」
「俺は、ここで千花に出会えてよかったと思ってる」
