「……こっちこそ、ありがとうっ」
「 ? よくわかんねーけど、どういたしましてっ。 あとで写真アップしとくなっ」
「うんっ」
小さく手を振ると、マルはその5倍 力強く手を振り返してきた。
子供っぽい動作がおかしくて笑うと、マルもまた笑う。
距離は遠くなっていたけれど、私たちはお互いに笑顔を見せて僅かな時間を楽しんだ。
「じゃあね、マルっ」
「あぁっ、じゃあなっ」
何度も手を振り、また少しずつ離れていく。
……もう余計なことを考えるのはやめよう。
みんなが居る前で話せなくてもいい。
二人で話せる時にいっぱい笑い合えば…それでいい。
「……また校舎裏に行こう。 そうすればきっと、マルと話す時間が取れるから」
ポツリと呟いたあと、だいぶ賑わってきた校舎の中に入って場の空気に溶け込む。
私は、マルの撮る写真が好き。
そして…マルと一緒に居る時間が好きだ。
周りに人が居ると引け目を感じて話せなくなってしまうけど、好きって気持ちは変わらない。
マル。
いつの間にか私は、マルのことを好きになってたよ。
マルが撮る写真だけじゃなくて。
一緒に居る時間だけ、ってわけでもなくて。
マルのことが好き。
いつの間にか大好きになってたんだ。