階段を下りていき、最後の段から砂に向かって勢いよくジャンプする。
靴の中はあっという間に砂だらけになったし、ズボンも砂まみれ。
だけど そんなのはどうでもいいと思えるくらいに、私は開放的な気分になっていた。
「なんだよ、急に元気になったな?」
「だって誰も居ないから、周りの目を気にしなくて済むでしょっ?」
「だからさー、周りに人が居たって気にせずに過ごせばいいじゃん」
「それは無理っ。 なので今 はしゃぎますっ」
時雨くんの手を離したあと、一人で駆け回る。
砂に足を取られて転びそうになるけれど、なんだかそれすらも楽しい。
あぁ…来てよかった。
道中は嫌な気分だったけど、全部忘れられる。
凄く満ち足りた気分だ。
「時雨くん時雨くんっ、ねぇ見てカニだよっ」
忙しなく動く小さなカニを見つけて、しゃがみこむ。
隣にやって来た時雨くんも、私と同じように しゃがみこんでカニを見始めた。