「……それよりもお前っ、デジカメは無事か?」
「それよりも…って何気に酷いね。 死守したから大丈夫だよ」
「もう危ないから置いとけ。 いや やっぱり俺が置くからよこせっ。 みぃに預けたのがそもそもの間違いだったんだっ」
あ。
また「みぃ」って呼ばれた。
さっきの…聞き間違いじゃなかったんだ……。
「時計撮るのに移動したくなかったから みぃに渡したけど、ちゃんと自分で片付けりゃよかったよ……」
「……ねぇ時雨くん」
「んー?」
「私のこと、ずーっと「みぃ」って呼んでるね」
まだ少し痛い鼻をさすりながら時雨くんを見る。
そうすると時雨くんは、ちょっとだけ驚いた顔をした。
「あれっ? 今度からそう呼ぶって言ってなかったっけ?」
「ううん、全然言われてない」
「あー……じゃあ頭ん中で思ってたことを言った気になってたのかも。 今更だけど、今度から「みぃ」って呼ぶよ。 もちろん学校じゃそんな風には呼ばないけど、写真の話をする時はそっちの方が呼びやすいからさ」
……私に了承を得るわけではなく、「みぃ」って呼ぶのは既に決定事項らしい。



