「ごめん、愛の告白とかじゃないよ。 さっき進路指導の先生に会って、呼んでくるように頼まれたんだ」



伊勢谷くんがそう言ったら、女子たちは安堵のため息を漏らした。



「そうだったんだぁ」

「だよねぇ、あり得ないもんねぇー」

「よかったー」



……だから全部聞こえてるってば。

という心の声が漏れ出ないように気をつけながら、伊勢谷くんに笑みを見せる。



「伊勢谷くん、わざわざありがとう」

「いえいえ。 先生のところまで案内するよ」

「うん」



優しく笑う伊勢谷くんと一緒に、廊下に出る。



「トラ、愛の告白 頑張れよー」

「早乙女にフラれたら慰めてやるからなー」



アホな男子たちが、ニヤニヤしながら からかってきた。

……伊勢谷くんのファンの子たちに打ちのめされればいいのに。


そう思いながら、私は歩き始めた。