「……本当なの?」
「うん。 ていうか、ここで嘘を言う必要なんてないと思うけど」
「……」
「予鈴までには教室に戻りたいから、もう行っていいかな? ……いいよね? もう行くね」
相手からの返事がない状態だけど、そのままドアへと向かう。
……大丈夫。
挙動不審な動きは見せずに、堂々としていればいい。
そうすればきっと、私がついた嘘は本当のことだと思われるはずだから。
「早乙女さん」
ドキリ、と心臓が鳴る。
「まだ何か?」
表情は変えずに、声をかけてきた真ん中の女子を見る。
「さっきの話が本当っていうのなら、今 弟くんに電話してくれない?」
「……なぜ?」
「早乙女さんの言葉に嘘がないか、弟くんに直接聞きたいの。 確かめるだけなんだから、もちろんいいよね?」
また、真ん中の女子が にっこりと笑う。
……相変わらず、敵意たっぷりだ。
ここで「必要ないじゃん」って言って逃げたら、きっと「やっぱり嘘だったんだ」って言われるんだろうな。
きっと…今以上に面倒なことになるはずだ。
「……わかった。 でも長々と話すのは無理だからね。 向こうだって、もう学校だろうから」
逃げずに応える。
多分…これが正解だ。



