「…千景くん?」

千景くんはしゃがんだまま、下を向いていた。私は千景くんの横に腰を下ろした。



「その…矢野とは、付き合うの?」

「矢野くん?」
「うん」


なんで?なんで、そんなこと聞くの?

「‥友達から始めてほしいって言われたよ。まず友達になるのは良いと思って、返事はしたよ」




「…そっかー。あー、早とちった俺ー…」
「え?どういうこと?」


そこでやっと顔を上げてくれた千景くん。恋愛経験がほとんどない私が勘違いしてしまう位に、千景くんの顔は真っ赤だった。


「明日、デートして…」

「デート?!」


「うん、明日色々話すから。

とりあえず…今言いたいのは、矢野と付き合わないで。矢野のものにならないで」


今日は太陽に照らされている千景くんの髪が金色に透けていた。

風にゆらゆら揺れる少し伸びたパーマ。私ははじめて正面から、甘い、はちみつのような彼を見た。

高鳴る胸でようやく気づいた、あの道を抜けて初めて会ったときから、千景くんはただの気になる存在じゃなくて、これは恋だということ。



私、千景くんが好きなんだ。