『素敵だなんて…』

私は、首を何度も横に振った。

『結菜ちゃんに、毎日消えそうな心の隙間を埋めてもらってた。そして、別荘にきて、一緒に住むうちに、完全に心を取り戻したんだ。結菜ちゃんに言われて、ピアノへの情熱がさらに燃え上がった。父にも明日話そうと思う』

『お父様に話すのね』

『結菜ちゃんのおかげだよ。どんなことを言われても、父がわかってくれるまで、話して行こうと思う』

『…うん。祥太君のピアノ、本当に素晴らしいから、いつか、お父様にも聞いて頂いたらいいよね』

『ありがとう。俺、結菜ちゃんには健太さんがいるって…ちゃんとわかってる。だから…片思いでも仕方ないって思ってるよ。でも、俺の気持ちは伝えたかったんだ。勝手でごめん…』

『祥太君、ごめんね、ありがとう』

『…でもさ、いつかは…って言う期待は持ってるから。俺、あきらめないよ、結菜ちゃんのこと』

そう言って、祥太君は微笑んで歩き出した。

雨はもう…上がっていた。