『結姉、すごく…綺麗だよ』

え?

今、なんて言った?

『本当に綺麗だ…』

さっきまで普通に会話してたのに、急にそんなこと言うから、びっくりした。

『やめて、からかわないで。私、綺麗なんかじゃないし、お世辞言ってもお家賃は安くならないわよ』

思わず冗談を言ってた…

なのに、颯君、何も言わない。

いやだ、何か言ってよ…

恥ずかしいじゃない。

『颯君…朝もだけど、なんか変だよ』

『…変じゃないよ、俺は。あの時は、健太さんが結姉のこと馬鹿にしたから』

そうだったね、旦那は私を女としては見ていないから…

私のことは、ただのオバサン扱い。

若い時は、まだ…もう少し、大事にされてたのにね。

『仕方ないのよ、本当のことだから。あの人は、智華ちゃんやひなこちゃんみたいな若くて可愛い子だけが女だと思ってるんだから。私は…もう…』

『結姉!』

突然、颯君が立ち上がった…

と、思ったら、次の瞬間、私を…

座ったままの私を…

大きな腕で包むように、優しく抱きしめた。