「今日の藤子、ちょっと元気ない感じ」
「……」
「ま、いいや。また連絡するよ」
玄関で靴を履きながら私に言った、そんな凌一の言葉が複雑に心に響く。
少し乱れてしまった部屋着のまま、凌一が閉める玄関ドアの音を聞く。
だけど―…
一度、凌一が閉めた玄関ドアをそっと開き、隣りの部屋のドアを見てしまう私。
隣りはまだ留守の筈。
そう思うと、何故かホッとしてる。
それに、また、凌一の事を見られていたら、何を言われるかわかったもんじゃない。
凌一との関係―…
こんなにも自分が優柔不断で、
臆病だから―…
これ以上、心の中を見透かされたくない。
ましてや、出会ったばかりで、
印象は良いとは言えない相手に、自分の情けない部分を見透かされるなんて嫌だよ―…
部屋に戻り、暫くの間ずっと、ぼけーっとロミ男の住む水槽を観続ける。
次にふと、テレビ画面に視線を移すと、ドラマをやっていた。