どうしよう。
声が出ない……
身体に回された腕が、しっかりと私をつかんで離さない。
黒い長袖と、黒い手袋を私の視線が捉える。
夏なのに、この格好って……
絶対そうでしょ?
通報、
通報しなきゃ……
そう思うのだけれども、携帯を操作する手が震え、
カタン……ッ!
と、コンクリートの上に落としてしまう。
私、このままどうなっちゃうの……?
頼みの綱の携帯が手から離れてしまって頭が真っ白になってしまいそうな、一歩手前の時だった。
「う゛……っ」
耳元で聞こえた低い男の声。
その声と一緒に何故か身体に回された腕の力が緩まる。
そして、
ボカッ、
と、聞こえた鈍い音。

