今年の夏休みは、中学の時とは違って気楽に遊べそうだ。何故なら俺は、進学するつもりが無い。特にしたい事も無いし、適当な職にでもつくんだろう。
そんな事を考えている自分自身が、たまにとてつもなく下らなく見えてくる。

ふぅと気だるげな息を1つ吐いて、教室の窓を眺めてみる。夏定番の向日葵が風に揺れていた。栽培委員の人が植えたんだろう。

栽培委員と言えば──


「見て、島崎さん、また花植えてるよ」
「花が恋人なんじゃな〜い?」
「あははっでもあの花綺麗だし、島崎さんと釣り合わないね!」

低俗な会話と浅はかな笑い声が、嫌に胸の奥に残って歪みを作ったあの日。どうしてあんな事を言うのか、心の底から不思議で仕方が無かった。
だって、彼女はあんなに綺麗なのに。

同年代の女子は「可愛い」と形容するのが普通なのに、彼女は美しかった。いつもはクールなのに、綺麗な花を見つめている様子はとても嬉しそうで。

それでも、彼女の事は忘れかけていた。