柚月は「お金」という意味で手を差し出した。真由はそれに手をのせる。




「いやお前の手はいらねー」



「失礼な。これでもあたしは人気者なんだぞ」



「はいはい」



 そう話していると、グラウンドから視線を感じた二人は目を向けた。そこには笑顔の保健医:佐倉みことが手を振っていた。
 それに応じて手を振るのは柚月。真由はすぐに違う方向を向く。




「仲良しだね、アンタたち」



「ごっごしてるだけ。あの人、基本的に温和な人だから」



「知ったかぶってるー」



「ま、どう思おうが勝手だが」



「アンタ相当性格悪いね」



「生まれつき」




 柚月はついに立ち上がり、真由からイヤホンを奪い返す。




「あの人は特別な人を作らない。それが良いところ」



「なんで?柚月って先生が好きじゃないの?」




 そこを突きつけると柚月は大きくため息をして立ち上がる。カバンを机の横端からつまみあげて扉に向かった。その柚月の背中を追うのは真由。しかし相手にされない。それどころが迷惑そうな表情を浮かべる柚月。




「勝手な妄想するな」



「妄想って・・柚月はさ、あたしと付き合えば良いんだよ」



「興味ない」





 それだけを言い残して階段を下りて行った柚月だが、そのあとを追おうとしない真由は、教室に戻った。窓からはまた、みことの声が響く。




「・・・まじ厄介だ」