わたしと先生。

その瞬間、ぐにゃりと視界が歪んだ。
そして、それと同時に身体が地面に向かって倒れ出す。
スローモーション。
倒れていくことが分かっていても、力が入れられなくて。
私は次来る衝撃に向けてぎゅっと身体に力を入れた。


でも、いつまで経ってもその衝撃は来なくて。
ぎゅっと瞑った目を開けると。

『大丈夫ですか?』

ひとりの男の人が視界を埋め尽くした。

天パ。泣きぼくろ。たれ目。紺色のセーター。
先生だというのは、一目見て分かった。

心配そうに眉を下げるその表情を見たあと。
私は意識を手放した。


『んん……』

次、目を覚ますとそこは白い空間だった。
ばっと身体を起こすとそこはベッドの上で。
保健室だと言うことをその後理解した。

起きたときにはいだ布団の音で、私が起きたことに気づいたのか。
保健室の先生が、カーテンレールを開ける。

『体調はどう?』

『あ……はい、大丈夫です。』

『よかった。あと10分で1科目めが始まるわ。』

『えっ!?』

どうしよう……!あと10分しかない……!
教室も分からないし、第一10分前に入室ってできたっけ?
もしかして、もう受けられない……?
せっかく今日のために頑張ってきたのに。
ここまできたのに、私もうここに来られないの……?

泣きそうになるのをぎゅっとこらえる。
唇を噛みしめていると。

『運んでくれた先生が手配しておいてくれたから、ここで試験を受けるといいわ。』

『え……?』

『小鳥遊ふゆさんで合ってるわよね?』

『は、はい。』

『倒れたときに受験票を持ってたから。勝手に見てごめんなさいね。』

『いえ……。』