『ふゆ、本当に大丈夫なの?』

『大丈夫だから。』

『でもあなた熱が……』

『大丈夫!』

本当は大丈夫なんかじゃない。
身体はだるいし、重いし。ふらふらする。
実は吐きそうだったりもする。
それでも、行かなくちゃ。絶対。

『お姉ちゃん……。』

妹の秋と春が心配そうにこちらを見ている。
ふたりだって学校あるのに、用意しなくちゃ間に合わないよ。

中学3年生。
今日は、公立受験の日。
ずっと通いたかった、本命の香ヶ丘高校の受験日。

なのにも関わらず私は、風邪を引いてしまった。
熱が38度を超えるくらいの。
それはもう強烈な風邪を。

『やっぱり車で送ってくわ。』

『お母さん今日大事な会議でしょ?大丈夫だから。』

『ふゆ……。』

『行ってきます。』

心配そうな3人に作り笑いを浮かべながら、私は家を出た。

真冬の外は痛いくらいに寒くて。
コートにマフラー、手袋をしていても関係なしに冷たい風が身体を侵食する。

薬は、試験中眠くなると困るから飲んでいない。
その代わり、栄養ドリンクを飲んできた。
少し高めの、強力なやつを飲んだから効いてくれるといいんだけど……。

中学2年生の秋、香ヶ丘高校の文化祭に遊びに行った。
頭のいい学校だから、どうせお堅いやつだろうなって思ってて。
でも、友達のみくりちゃんが誘うから仕方ないなってそれくらいの気持ちで遊びに行った。