やっぱり嫌いだ。こいつ嫌い。


そんな思いを新たにしつつ、天王子に手を引かれるまま歩いていると



「何なんだよほんと」


天王子がボソッと、呟くように言った。



「何でお前のことは大丈夫なんだよ俺」


おそらく女アレルギーのことだろう。



「知らないよ。こっちが聞きたい」


「こんな大して可愛くねーし幼児体系だし色気ねーしうるせぇし…」


「ちょっと!悪口!」


「ほんと何でお前なんだろ?」




天王子が歩を緩めて、隣の私に視線を落とす。


茶色い瞳が揺れている。


いつもの偉そうで自信に満ち溢れた瞳とは少し違うような気がして、思わず口をつぐんでしまった。



「…だから、知らないって…」



少しの間の後、ようやくそれだけ返す。



「…だよな」



天王子がフッと笑った。



「ほんとラッキーな女だなお前は。

その特異体質のせいで俺にハグされたり手繋いでもらえるんだぜ?ほんと幸せな奴。今、一生分の幸福使い潰してんじゃねーの」


でも次の瞬間にはいつものえっらそうでムカつく天王子に戻っていて。


…なに、今の。幻覚?気のせい?



「いやどっちかというと今一生分の不幸を使い果たしてる気がする」


「シバくぞブスが」




うん、気のせいだなきっと。