「うーん…」
本日何度目かの試着室のカーテンを開けた私を見て、天王子が渋い顔をした。
「どうもビミョーなんだよな」
「またそれぇ?」
「何でこうも服着こなせないんだよお前」
不機嫌そうにそんなことを言われるけど、そんなこと言われても困る!
「うるさいな…もういいよコレで。この服可愛いし」
着せられた花柄のブラウスの襟元をつまんで言うと、
「はぁ?」
睨まれた。
「俺の金で買うからには半端は許さねぇ。納得できるまで今日は帰さねぇそ」
まじで!?
突然の今日は帰さない宣言。全っ然ときめかないやつ。
おら早く脱げ、と私を試着室の奥に押しやる天王子。
「悪かったね凡人で…ってちょっと押さないでよ!」
「うるせー喚くなさっさとしろ」
「どうでしたぁ〜?」
その時、甲高い声で店員さんが近づいてきた。
天王子が私の肩を押していた手を離す。
わぁ、と店員さんがわざとらしく一際高い声をあげた。
「すっごくお似合いじゃないですかぁ♪」
「いやでも、もう少し彼女に似合うものがあると思うんですよね」
ニッコリ、すかさず猫をかぶった天王子が柔らかい口調で返す。
「とりあえずコレとコレとコレとコレとコレ、試着してもいいですか?」
いつの間に選んでいたのか、手に持った山盛りの服を私に押し付ける天王子。



