「その服ダサすぎ。一緒に歩いてる俺が恥ずいわ」
私の全身を改めて眺め回しながら見下したような口調の天王子。
「あ、あのねっ…これはあくまで変装で、目立っちゃいけないと思ったから!普段はもうちょっと可愛い服だって…!」
ざわ、とようやくその時、私は周囲の何やらただならぬ気配を察知した。
見ると、まわりの女子みんながこっちを見てる。
ムリもない。ただでさえ男子ってだけでココでは目立ってるのに。
それがよりにもよって天王子なんだから。
「…だからって仮にも俺の隣を歩くんだから」
天王子がニッコリ笑顔で、私の前に立つ。
まるで周囲の視線から、私を隠すみたいに。
「つべこべ言わねーでとっとと選べ」
笑顔で吐かれた暴言は、私だけに聞こえるように。
「…そんなこと言ったって私あんまりお金ないんですけど…お小遣いけっこう使っちゃったし」
天王子の柔らかい笑顔からは、“絶対買え”という圧力のようなものが伝わってくる。
仕方なく服をなんとなく見渡しながらそう言うと
「はっ、安心しろ。俺が買ってやるよ」
すぐ私の隣に並んだ天王子が言った。
まわりの視線を嫌でも集めているという自覚があるらしく、声はだいぶ抑えている。



