それから何軒も服屋を見てまわり、やっとお昼ごはんにありつけた時には既に午後2時を回っていた。
「つっっっっかれた……」
もはやメロンソーダをすする元気すら残っていない。
若者に人気らしいハンバーガー屋さん。そこのテーブル席にどうにか腰をおろした私たち。
ストローをくわえたまま動かない私に、ハンバーガー片手の天王子が眉をひそめた。
「大袈裟だろ」
「あんたはいいでしょうよ自分の買い物だしっ!こっちは連れまわされるわ荷物持ちさせられるわ店員のオネーサンに嫉妬の視線ファイヤーを浴びせられるわ…!」
「仕方ねーだろ俺モテるし。我慢しろ」
サラッとそう言う天王子に募るイライラ。
誰かコイツに“謙遜”という素晴らしい日本語を教えてあげて欲しい。
「て、いうかこんなんでホントに女アレルギー克服になってるの?ただアンタが楽しく買い物してるだけじゃん」
そして私はただただ貴重な土曜日に疲れているだけ!
そんな皮肉をこめて言ってやったのに、天王子はニヤリと楽しそうに口角をあげた。
「あ?なんだ、手を繋いで歩くだけじゃご不満か?」
「そ、そういうこと言ってるんじゃ…!」
「じゃーもっとすげぇことしてやろっか」
クイッと天王子が長い指で、私の顎を強引に持ち上げる。
強制的に合わさった視線。しかも至近距離。
どっ…
「なーんてな」
すぐに私の顎を解放した天王子は、椅子に座り直してフンと余裕の微笑みだ。
どっ…
ドキドキなんて
絶対絶対してませんからー!!



