天王子も気が緩んでいたのか、慌てて繋いだ手を振りほどくと存外あっさりと解けた。
マスクによって隠されたその向こうで、私はゴクリと唾を飲み込む。
私が気を付けなければいけないのは学校の女子だけではなかった。
プリンス…いや、モデルの“Rei”のファンはあちこちにいる。
敵は学校だけじゃない…もはや…全世界…!!
「ん?どうしたの村田さん?なんか顔色悪いけど」
マスクとサングラスのせいで私の顔なんか見えるはずないのに、天王子が優し気な笑顔でそんなことを言ってきた。
そこで初めて、今まで天王子に夢中だった女子2人の視線が私に向く。
ちょっ…話をふるなバカプリンスがぁー!!
「…心配しないで、あと私の名前は田中です」
「は?」
「だから、田中です」
天王子は不思議そうに首を捻ってるけど、軽々しく私の個人情報バラさないで欲しい。
私は村田ではなく“田中”になりすますことを決めた。
この変装の上に偽名を使えば、さすがに私の正体はバレないでしょう…!
「ところで…この方は誰ですか?」
女子の一人が、天王子にそんなことを聞き出した。
「まさか…彼女?」
女の子の不安と嫉妬が入り混じった視線を感じる…。
間違えたよ私。
変装するべきは私じゃない、天王子だった!!



