電車で二駅乗って着いたのは、この辺で一番栄えている繁華街。
洋服、流行りの食べ物、ゲーセン、映画館…なんでも揃っていて、私も何度もみのりと遊びに来たことがあるけど、こうして男子と二人で来るなんて初めてだ。
街に流れる流行りの音楽がうるさいくらい。
まだ午前中だというのに、既に多くの人で賑わっている中を天王子と手を繋いで…というより、引っ張られるようにして歩く。
天王子歩くの速いんだもんっ!
ていうか何、もしかして足の長さの差!?
「おい、おせーよ。もっとテキパキ歩けねーのか」
後ろを振り向き、文句を言ってくる天王子。
「そっちこそもっとゆっくり歩いてよ!」
「嫌だ。お前が俺に合わせろ」
くっ…なんと自分勝手な!!!
だけど、そんな性格の悪い天王子だけど、やっぱり見た目は極上に良いらしい。
あちこちから女の子の視線を感じる。
かっこいい〜、なんていう声もチラホラ聞こえてくる。
天王子のくせに生意気だ。
所詮この世は見た目なのか…。
「よしここ入るぞ」
「っぶ!」
世の不条理さを嘆きつつも必死に歩いていたが、天王子が急に立ち止まったせいで奴の背中に顔面を強打した。