「ふーん?」
それ以上あれこれ言ってくることはなかったが、天王子はまだどこか腑に落ちなそうな顔をしていた。
「まーいいけど。早くカバン持ってこいよ、もう出るぞ」
そして私を置いて、さっさと外に出てしまう。
…ったく、ほんとに自己中なんだから。
私と天王子の部屋は5階である。
エレベーターで1階におり、エントランスを抜けて外に出ると、天王子が突然私の手を握ってきた。
「!?」
「何ビックリしてんだよ。デートっつっただろうが」
ハグはもう毎日のようにされてるけど、こうして手を繋ぐことなんて初めてだ。
慌てて引っこ抜こうとしたけど、天王子にグッと力をこめられて阻止される。
「そ、そんな…やだよ!天王子と手を繋いで歩いてたのがバレたら何言われるか…!」
「バレないための変装なんじゃねーの」
そ、それはそうなんだけど。
思わず言葉に詰まった私に、ニ、と意地悪い笑みを浮かべる天王子。
「手離したらあの写真バラまくからな。行くぞ」
「ちょっ…!」
天王子が急に歩き出したものだから、つんのめりそうになった。
慌てて天王子の歩幅に合わせ、私も歩く。
手を繋いで歩く、なんて。やだなぁ。なんかホントのデートみたいだ。