そして無情にも時は流れ、来るな来るなと願っていた土曜日がついに、やってきてしまった。
朝10時。
ピンポーン
インターホンが鳴る。
ちなみにお母さんは今日は朝早くから、友達と約束があるからと言って出かけている。
恐る恐るカメラの映像を覗くと、仏頂面の天王子が立っていた。
ちょっ…待ち合わせよりまだ30分も早いんですけど!?
天王子がカメラの向こうにいる私を覗き込むように顔を近づけた。
そして
ピンポンピンポンピンポン―――
なぜか連打!
「あーもうっ!うるさいな!!」
私は文句を言いつつ仕方なく玄関に向かいドアを開けた。
「おせー。居留守使ってんじゃねーよ」
不機嫌そうな天王子。
黒いスキニーパンツに、白のスウェットトレーナー、その上から深い緑のジップブルゾンを羽織っている。
はじめて見る天王子の私服はシンプルで、悔しいけど物凄くよく似合っていた。
スキニーパンツのせいか、制服の時よりも足の長さが際立って見える。
「見とれてんじゃねーよ」
「は?誰が!」
天王子がバカにしたようにそう吐き捨て、中に入ってこようと私を軽く押しのけた。