「開人。何でお前がいんだよ」
天王子が低い声で言う。
「何でって言われても、俺がどこにいようが自由じゃない?」
「ここには来んな。帰れ」
「うわっヒドッ。なんか最近玲、俺に対して冷たくない?」
ハハハ、と笑う水川をきつく睨みつける天王子。
「言っとくけど俺はまだ許してねーからな。コイツがイジメられてる間、お前が見捨ててたこと」
「だからぁ、見捨ててたワケじゃないよ。役不足だったんだから仕方なくない?
それにー、玲の知らないところでナイスなアドバイスしたりもしてたんだから。ねー、一花ちゃん?」
近づいてきた水川が、グイッと私の肩に手をまわして引き寄せる。
「あー俺っていい親友」
「お前な」
立ちあがった天王子が、強い力で水川の首根っこをつかみ引き剥がした。
「うわっランボー」
「うるさ。こいつに触んな」
「かっこい~」
ヒュー、と棒読みで言う水川の首根っこから、天王子が突き放すように手をはなす。
「いいから帰れ!」
「はいはい、邪魔者は退散しますよ~…あっもしもしサオリちゃんー?」
ちょうど女子から電話がかかってきたらしい、水川は軽快な足取りで屋上を出ていった。



