「…待って、妃芽ちゃん」



私が呼びかけるのと、倉庫のドアが開いたのはほぼ同時だった。



ゆっくりと開いたドアの向こうにいたのは




「…だから忠告したのに」



黒い艶やかな髪。





「…何で、九条先輩が…?」




九条先輩がフッと笑う。




「なんか全然反省してないみたいじゃない?平気で学校なんか来て。だから少し、分からせてあげようかと思って。…リュウ」




九条先輩の背後から、“リュウ”と呼ばれた男の人が出てきた。




色の抜けきった金髪に、青いカラコン。大学生くらいだろうか。




「どーも」




“リュウ”は、私を見ていやらしい笑みを浮かべた。




「反省、させてあげてくれる?」



「…リョーカイ」




九条先輩の言葉に、ゆらりと、リュウが近づいてきた。





―――気持ち悪い。





「…な、何する気…!?」




私の背中を、冷たい汗が流れる。




「ビデオ撮りますか?」



九条先輩の取り巻きがそう聞く。




「いいえ、いらないわ。この女のしてるトコロとか興味ないもの。じゃぁリュウ、後はよろしくね」




そして九条先輩は私に背を向けた。