「…じゃぁ、嫌い?」




妃芽ちゃんがゆっくり近づいて、私と距離を詰める。



「一花ちゃんは玲のこと嫌い?」



「………嫌いだった」



「だった、ね…」





ふ、と妃芽ちゃんが唇を歪めた。




「好きって言えばいいのに」



「……妃芽ちゃん…」



「…それ」





妃芽ちゃんが私の足元に視線を落とす。




「どうしたの?膝」


「あ…」





私の右膝に貼られた大きな絆創膏。


今日廊下を歩いていたら、後ろから思い切り誰かに押されて転んだ。



…日々、イジメはエスカレートしてる。





「…なんか私のときより酷いよね、ちょっと」




妃芽ちゃんが口元に手を当てた。笑ってる。




「やっぱあれかなぁ、顔面偏差値の差?」




…薄々思ってたことを。




顔をあげると、妃芽ちゃんが「睨まないでよ」と笑顔を消した。




「言っとくけど私は何もしてない。“撮った”だけ」



「やっぱり撮ったんじゃん…!」



「だけどそれ以外は周りが勝手にやってることだよ」





妃芽ちゃんが背を向ける。





「これが一花ちゃんがやったことに対する、みんなが下した“制裁”だよ」





妃芽ちゃんが体育倉庫のドアに手をかけた。