「アイツらにはちゃんと言ってあるから。
学校から一歩外に出たら俺には一切干渉すんなって」


フン、笑う天王子はどうやら、絶対の自信があるらしい。彼女たちが、絶対に自分を裏切らないという自信。


「…信じられんの?それ」

「大丈夫だろ。アイツらが何を一番恐れてるか知ってるか?俺に“嫌われる”ことだ」



そしてゆっくりと組んでいた足を解き、天王子がベッドから立ち上がる。



「言いたいことはそれだけか?」


「…大嫌い」


「それは光栄だな」



嫌味っぽくそう言うと、天王子が顎で前を示した。



「こっちに来い」


「…何で」


「いいから」


「…絶対変なことしないでよ!?」


「わかったから早くしろ」



渋々、椅子から立ち上がり天王子の前に立った。


そんな私を見て、天王子が不機嫌そうに顔を歪める。


「遠すぎ」

「ち、近づく必要ある?」

「いいからもっとこっち来いよ」



偉そうな天王子。



「写真バラまかれてぇのか」

「う…うっさい!今行くから!」


恐る恐る、天王子の方へ一歩、また一歩、ゆっくりと近づいた。



「これでいっ…わっ」


天王子が突然両肩をつかみ引き寄せたせいで、前につんのめりそうになった。だけど転ばなかったのは、天王子がしっかり私の肩をつかみ支えていたからだ。


すぐ目の前に天王子の整った顔。



「へ、変なことはしないでって」


「だからしねぇよ」



天王子の透き通るような茶色い瞳がじっと私を見つめてる。



な、なんだ、睨めっこでもする気なのか。よしっ、どんと来い!



何が起きても笑うものかと、グッと唇を引き締めた時だった。天王子の茶色い瞳が、視界いっぱいに広がった―――