「…っ、あ、りがと…」
私はありがたくハンカチを受け取って目に押し当てた。
あ、そういえば今日に限ってマスカラ塗ってる…最悪だ… たぶん、ハンカチにマスカラついちゃったよね。クリーニングに出そう…
そう考えている間にも涙は次から次に溢れてくる。ついには鼻水まで出てきた。
いつもの調子で鼻水をかんでしまってから気付いた。
し、しまった!これ水川のハンカチ…!
「…ご、ごめん…!つい!」
恐る恐る水川を見ると、水川は相変わらず緩い笑顔だった。でも、心なしか顔が青ざめている。
「はは、信じらんねー。人のハンカチで鼻かむとか頭おかしいんじゃねーのこの女」
水川が感情のこもってない棒読みの声で言った。めっちゃ怒ってる!
「だ、だから、ほんとごめんて…!」
「でも玲はあんたがいいんだろうね」
水川が一歩近づいて、私の頭についていたゴミを慎重に払った。
「玲は一花ちゃんに救われたから」
「救った?私が?」
「俺が助けてあげてもいーんだけど、残念ながら出る幕じゃないんだよねー」
水川が近づいた分、今度は私から距離をとって、「残念だよねー」と全然残念じゃなさそうに言った。



