もしかしたら次は私の机とか椅子が落ちてくるんじゃ――
いつかドラマで見たそんなイジメのシーンを思い出して、私はすぐにその場を離れた。
まさか自分がイジメの標的にされてしまう日がくるなんて思わなかった。
とりあえず髪の毛と制服を洗いたい。生ゴミでグチャグチャだし臭いし、もう本当に最悪…。
泣きそうになるのを堪えながら人気のない廊下を選んで歩いていると、前からスマホをいじりながら歩く男子がやってきた。
その男子がスマホから顔をあげる――私に気付いてヘラッと笑顔になった。
「あっれー一花ちゃんじゃん?なんか頭にのってるよ?」
最悪だ…こんなところを水川に見られるなんて。
思わず表情を強張らせる私に臆することなく、近づいてきた水川が私の頭の上からヒョイッと何かを取り上げた。
黄色いバナナの皮。
「はは、すっげー。ドラマみたいなイジメられ方」
笑いごとじゃない!
私は水川を睨む。
水川はそれに気付いているのかいないのか、ヘラヘラ笑ったまま。
「なんかついにバレちゃったっぽいね~♪」
…なんで楽しそうなんだ。ていうか今の言い方…
「…もしかして水川、知ってたの?」



