―――だけどそう、現実は甘くない。
「……なに、これ……」
いつものように登校して、いつものように昇降口で上履きに履き替えて、そこでちょうどみのりに会って、一緒に教室に行こうとした…のに。
生徒玄関前の掲示板に張り出された写真。その前に群がる生徒たち。
なんだろうと思って覗いてみると、そこには天王子の部屋に入っていく、私と天王子の写真が張り出されていた。
その写真には赤マジックで、
【プリンスの隣に住む2年B組I・M
プリンスをたぶらかすサイテー女】
と書かれていた。
これ…昨日だ。
一体誰が、いつの間にこんなの撮ってたの!?
しかもこんな風に掲示板に張り出すなんて…!
周りを見ると、たくさんの視線が私に集中していた。
突き刺すような視線。
「…一花…これ、どういうこと!?」
隣にいたみのりが私に聞いた。
「プリンスと家が隣って…ホントなの!?」
「……ごめん、黙ってて。でもね、みのり…!」
私の言葉を最後まで聞かず、みのりは踵を返すと廊下を走っていった。



