ギブギブ、と腕を叩く私に、天王子がやっと力を緩めた。


だけど後頭部をガッシリ抑えられて離れられない。


動けばすぐに唇が触れそうな距離に天王子の顔がある。



「………っ」



喋ると吐息すら顔にかかってしまいそうだから、私は抗議の声をあげることもできずに視線を彷徨わせた。



心臓がバクバクうるさい。


天王子、何でこんなことするのっ…




そんな私を見て天王子が目を細める。




「…顔まっか」


「!? う、うるさいっ…」


「キスしたい」




ストレートな言葉にズキッと心臓が痛いくらい跳ねた。




「な、何言ってっ…」


「…はじめてだ。こんなこと思ったの。お前にだけ」




グ、と私の後頭部にまわった手に力がこもる。



そのままキスされるのかと思ったら、ス、と天王子の手が離された。




「天王子…?」


「…逃げなくていーの?」




天王子の試すような目。




「好きじゃない奴とキスはしないんだろ?」