「ん…!すごく美味しいです、この肉じゃが…!」

「やだぁ玲くん、大袈裟よぉ♡」


そして、そんな私の心配など露知らず、目の前で呑気に夕ご飯を食べているプリンス―――天王子。

学校が終わってみのりとカフェでお茶してから帰ってみれば、なぜか既に天王子がそこにいて、「遅かったね一花さん」なんて完璧すぎる笑顔で出迎えられてしまったのだ。

こいつ…まさか本当に、毎日うちで夕飯食べる気…!?


睨みつける私の鋭い視線には気付かず、天王子が続ける。


「なんていうかこう、普通の肉じゃがとは違う感じがして…きっと、一花さんのお母さんの愛情が、たくさん入っているからでしょうね」


「やだぁっもう、“一花さんのお母さん”なんて長ったらしいし、麻美でいいのよ♡ア・サ・ミ♡」


「じゃぁ…麻美さんで」


「はいっ♡何かしら?♡」



ニューヨークのお父さーん!あなたの配偶者が男子高校生とイケない道に走り出そうとしていますよー!!



「…ん?一花さんどうしたの?俺の顔に何かついてる?」



天王子の猫かぶりまくりの顔を凝視していた私にやっと気づいた天王子が、ニッコリと私に微笑む。


「いや…よくもそんな思ってもないこと言え…痛っ!?」


机の下で、天王子に思い切り足を踏まれた。