「……何笑ってんだよ」
天王子が不可解そうに眉をひそめた。
「わ、笑ってないよ!」
しまった!出してないつもりだったけどバッチリ顔に出ていたらしい。私は顔をひきしめる。
ま、ただ単に私の泣き顔が物珍しかっただけなんだろうけど。
何かうまい言い訳がないかと頭をフル回転させていると、天王子が更に質問を重ねてきた。
「あいつとうまくいってないわけ?」
「…あいつ?」
「いちいちとぼけんな面倒くせぇ。あのインテリメガネに決まってんだろ?」
インテリメガネ、とは…あぁ樹くんのことか。
ん?ていうか、この天王子の言い方って
「…もしかして天王子、私と樹くんが付き合ってると思ってんの?」
「……だろうが」
いや、だろうがって。
「違うけど…」
「………は?」
ピタ、と一瞬時が止まった。
「……じゃぁ何で昨日デートしてたんだよ」
「あれは…デートじゃないよ」
「…告られたんじゃねーの?」
「…告白されたけど…断ったから」
「………ふーん」
沈黙10秒。
天王子の、私の手首をつかむ手に、ギュッと微かに、力がこもった。



