私を無理矢理座らせたくせに、何も言おうとしない天王子。
私の手首はしっかりと拘束したまま、反対側の手で頬杖をつき何かを考え込んでいるようだ。
…私…いる意味ある?
「…あの、天王子。用事ないなら戻っ…「何で泣いた」
それまで何も喋ろうとしなかったくせに、私が喋り出した途端それに被せてきた。
「泣いてただろこないだ。理由を言え」
尖った声。何でこんなに不機嫌なんだろ。
「理由を言え、って…」
あなたのせいなんですけど。
とは言えない、絶対。
黙り込んだ私に、天王子は「…くっそ」と頬杖をついていた手で、今度は自分の髪の毛をクシャッと丸めた。
「あーほんっとイライラするわお前って」
「…は、何…」
「お前の泣き顔がずっと頭にこびりついて離れないこっちの身にもなれよ」
ジロ、と天王子が横目で私を睨む。
「お前のせいで夜も寝れない。どうしてくれんの?」
どうしてくれんの、って…
私は頬が少し緩むのを感じた。
やだ。なんか、睨まれてるのに、ちょっと嬉しい。
私のことが気になって仕方ないって言ってくれてるみたいで、嬉しい。



