“恋はするものではなく落ちるもの”




中学生の頃、読んだ少女漫画にそんなことが書いてあった気がする。



そのときは「ふ~んそうなんだ」程度にしか思わなかったけど、今になって実感する。




あれって本当だったんだ。




だって、論理的に恋が出来るのであれば、誰が好き好んであんな奴に恋なんか。



よりによって、何であんなに外面だけとんでもなく良くて、実際中身は最悪で、自己中で横暴で…





好きになるわけなかったのに。





「……もう最悪…」




私は朝の教室で頭を抱えていた。



ついさっきも、昇降口の前で天王子と妃芽ちゃんが一緒にいるのを目の当たりにしたばかりだ。



しかも最悪なことに天王子とバッチリ目が合ってしまった。私は慌てて逸らして走って逃げたけど。



…あー、ダメだ。
天王子と妃芽ちゃんが一緒にいるところなんて、今までだって何度も目にしてきた光景なのに。



自覚した今となっては、受けるダメージが比にならない。