「え、えっと、その、あの、それは……」



やばい。


こんなに分かりやすくしどろもどろになってたら、まるで“忘れてました”と言っているようなものだ。いや忘れてたんだけど。



とにかく一回落ち着こうと再度水に手を伸ばす。




最悪だ私。最悪の女だ。



人の告白を忘れるなんて。


告白されたときはあんなに浮かれてたくせに。


…私の大バカ者ぉ…!!!





水を一気飲みした私を見て、樹くんがプッと吹き出した。





「…い、樹くん…?」


「いやごめん。大丈夫。こんなことだろうなと思ってた、ほんとは」



クイッと樹くんがメガネを押し上げる。



「さっき考えてたこと。俺のことじゃないんでしょ?」



「………ごめん…」








「お待たせしました~」



店員さんがこの場にそぐわない明るい声で注文していたものを運んできてくれた。




私の前に置かれるコーラフロート。



パチパチ弾ける炭酸の泡になって消えたくなった。