店内に流れるゆったりとしたクラシック音楽。
落ち着いた内装に、静かな雰囲気。
こんな大人でオシャレなカフェに、まさか焼きそばパンが置いてあるなんて。
こっそり周りの様子を窺ってみたけど、それを食べているお客さんはいなかった。
…天王子が喜びそうだよなぁ。
あの焼きそばパン、購買のやつより少し高かったけど、すっごく美味しそうだったもん。
………ショートケーキじゃなくて、焼きそばパンにすればよかったかな…
「…一花ちゃん?」
「え?」
顔を上げる。
樹くんがメガネの奥からじっと私を見てた。
「…なんか今日、ボーッとしてるね」
「え」
最悪だ。
樹くんの前でボンヤリするの、これで何回目だろう。
「ご、ごめん!」
「いや…いいよ。俺のこと考えてくれてたんでしょ?」
「…え…」
にっこり微笑む樹くん。
「俺の告白の返事、考えてくれてたんでしょ?」
「………あ!!」
思い出した。
完っっ全に忘れてたけど。
“好きだよ”
私、樹くんから告白されてたんだった…!!!