愛されプリンス½








それからも日々、妃芽ちゃんへの嫌がらせは続いているようだった。




ある日は、妃芽ちゃんは上履きではなく、来賓用のスリッパを履いていた。


またある日は、朝登校すると、妃芽ちゃんの机にびっしりといたずら書きがされていた。



妃芽ちゃんは私が何を言っても、「大丈夫」「気にしてないから」と笑うだけ。



休み時間のたびにA組の天王子を訪問することもやめる気配はなく、女子からの鋭い視線が突き刺さっているのにも、気付いていないのか、気にしていないのか…。





「こういうの、やめた方がいいと思う」



ある日たまりかねた私は、移動教室で人が少なくなったときを見計らって、クラスの妃芽ちゃんイジメの主犯と思われる女子に物申しに行った。


いつも嫌がらせで困っている妃芽ちゃんを見て、楽しそうな笑顔を浮かべている。


プリンスファンクラブの一員で、熱心なプリンス信者。




「は?何言ってるのか意味わかんないんだけど」



その女子――北川さんは、私の言葉を鼻で笑った。



「妃芽ちゃんに嫌がらせしてるでしょ?」


「なにそれ。証拠でもあるの?」




証拠は…ない。


人目があるところで、妃芽ちゃんや妃芽ちゃんの物に危害を加えることはないし、妃芽ちゃんに嫌がらせをする、その現場を押えたわけでもない。