愛されプリンス½





追いかけると、妃芽ちゃんが足を止めて振り向いた。



そしてニコリといつも通りの笑顔。



「なに?一花ちゃん」


「…妃芽ちゃん、さっきの…」



それだけで、私の言いたいことを察したららしい。



あぁ、と妃芽ちゃんが何でもないことのように後を引き取った。




「教科書?びっくりしちゃったよ、私も」


「びっくりって…誰かにやられたってことだよ…ね?」


「はは、逆にそれ以外何があるの?」


「…犯人だけど、たぶん、あいつの」


「ファンクラブの人たちだよね?実は一昨日、呼び出されたんだ。あの、九条先輩?って人に」


「えっ…」




九条先輩!?




少し前、妃芽ちゃんをじっと見つめていた九条先輩の姿を思い出す。




やっぱり恐れてたことが現実になったんだ。




「九条先輩に玲には近づくなって言われたんだけど、無理ですって即答したらこれ。

上履きに砂詰め込まれてたり、ノートの表紙が破られてたり?あ、でも心配しないで?今のところ、怪我するようなことはされてないから」



「心配するよ…!」




しないはずがない。



プリンスのファンクラブが過激なのは有名な話。




プリンスの隣の席になったってだけで、退学に追い込まれた女子もいたって聞いた。