追いかけると、妃芽ちゃんが足を止めて振り向いた。
そしてニコリといつも通りの笑顔。
「なに?一花ちゃん」
「…妃芽ちゃん、さっきの…」
それだけで、私の言いたいことを察したららしい。
あぁ、と妃芽ちゃんが何でもないことのように後を引き取った。
「教科書?びっくりしちゃったよ、私も」
「びっくりって…誰かにやられたってことだよ…ね?」
「はは、逆にそれ以外何があるの?」
「…犯人だけど、たぶん、あいつの」
「ファンクラブの人たちだよね?実は一昨日、呼び出されたんだ。あの、九条先輩?って人に」
「えっ…」
九条先輩!?
少し前、妃芽ちゃんをじっと見つめていた九条先輩の姿を思い出す。
やっぱり恐れてたことが現実になったんだ。
「九条先輩に玲には近づくなって言われたんだけど、無理ですって即答したらこれ。
上履きに砂詰め込まれてたり、ノートの表紙が破られてたり?あ、でも心配しないで?今のところ、怪我するようなことはされてないから」
「心配するよ…!」
しないはずがない。
プリンスのファンクラブが過激なのは有名な話。
プリンスの隣の席になったってだけで、退学に追い込まれた女子もいたって聞いた。



